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「害虫防除の常識」 (目次へ)
1.害虫とは
2) 加害の仕方から害虫を類別してみる
次に、害虫を加害の仕方から類別してみる。まず、害虫が農作物のどの部分を加害するか、果実、種子、茎葉、花、根のどこが主な加害部位であるのかを知る必要がある。また、その害虫が加害することによって、病気をうつしたり、異常症を起こす場合があるので、病気の媒介性について知っておくことも重要である。
害虫の加害部位が商品となる部分である場合には、比較的低密度の害虫の加害であっても、商品価値の低下につながりやすい。しかし、果実が商品である場合に、葉を加害する害虫に多少食われたとしても、このことによって光合成が抑制され、果実の糖度やサイズが影響を受けるようになるのは、かなり害虫の密度が上がってからである。ただし、苗の時期に茎葉を加害される場合には被害が出やすい。一方、害虫が媒介するウイルス病やシルバーリーフコナジラミがトマト果実に引き起こす着色異常症などは、比較的低密度の害虫の吸汁によって起こる(表1)。
また、消費者は、農産物を購入する場合に、味や大きさは変わらないのに、外観の汚れや害虫によるわずかな加害痕を気にすることがある。そのような形の加害をする害虫をコスメティック(見かけ上の加害をする)害虫と呼んでいる。例えば、ミカンの果皮にわずかな吸汁痕を付けるチャノキイロアザミウマや果皮に付着するヤノネカイガラムシ、カキの果皮に吸汁痕をつけるカキクダアザミウマやへたに付着するフジコナカイガラムシなどである。このような害虫の加害、あるいは寄生した農産物は、一般市場には出せなくなるか、出しても価格が安くなる。
最近、国や都道府県はIPM(総合的有害生物管理の略称)の推進を図っているが、IPMでは、害虫の加害によって経済的に被害が生じる水準(あるいは、害虫密度)がどの程度であるのかを知ることが重要である。この経済的被害許容水準(密度)(表2)は、害虫の種類や加害部位、作物の生育時期によって異なってくるので、一概には言えない。しかし、それぞれの条件下で、害虫ごとのおよその目安を知っておく必要がある。
害虫の密度が、経済的被害許容密度に達してから防除をしたのでは手遅れになる場合があるので、あらかじめ、防除を開始する被害の水準(要防除水準)あるいは害虫の要防除密度を設定して、その水準(密度)になったら防除を行い、経済的被害が生じないようにするという考え方がある。要防除水準(密度)については、作物の種類ごと、作物の生育段階ごと、害虫の種類ごとに違ってくる。要防除水準(密度)の例が、日本植物防疫協会のホームページにまとめられているので参照されたい。